第625回 一人暮らしと仕事の覚え方。(57)
引き続き、仕事の覚え方について提案させていただきます。
接客業に就いた場合の注意点です。
色々ありましたが、件の脳筋教師もようやくチェックアウトの時がきました。
延泊する様子も無いようです。
その朝のことでした。
7時を過ぎ、チェックアウト客が増えてきた頃、脳筋が女生徒を一人連れてフロントまでやってきました。
生徒は部屋着のまま顔を伏せていて、少し様子がおかしいです。
逆に脳筋は朝も早いというのに、妙にハツラツとしていて(鳥倉の個人的な感想です)少し気に障ります。
何とも言えない興奮した表情(鳥倉の個人的な感想です)で頭のてっぺんから出したようなテカテカした声(鳥倉の個人的な感想です)で朝の挨拶もそこそこにこうおっしゃいました。
「すいません、ウチの生徒がシーツを汚してしまったようなんですよ」
鳥倉は
「なぜそれをお前が言うんだ?」
と言いたいのを抑えようとして、つい「はあ…」と曖昧な返事をしてしまいました。
これが良くなかったようです。
すでにロビーに他の宿泊客がちらほらいる中で、脳筋がやけに通る声で改めて
「いや、ウチの生徒がね。○階の。○○号室。寝ているうちにシーツを汚したらしいんですよ」
とやたらと高いテンションで言いました。
数人いたフロントスタッフ全員にとっても割と新しいタイプの人種からの、新しい種類の申し出だったので少しフリーズしてしまいました。
お局社員さんが最初に「こりゃいかん」と再起動し、フロントを出て女生徒をその場から連れ出しました。
それを見て我に返った課長の
「シーツは毎日交換しておりますのでお気になさらずそのままで…」
という言葉に被せるように脳筋が
「最初に聞いたときは寝小便だと思ったんですよ、でも部屋まで見に行ったんですが生理だったんです。血が。小便じゃなくて。」
続きます。